Story
文化大革命の嵐から逃れた桃源郷で、なぜ人々は殺されたのか。
1968年12月。文化大革命の渦中。若き劇作家・李蔡文は江西省と湖南省の省境の山中に人知れず聳える円形の楼閣「文閣楼」に到着した。
元解放軍元帥、京劇役者、推理作家、映画女優、科学者、料理人、僧侶……。文化大革命を主導する「四人組」の魔手から逃れた文化人たちが、周恩来首相の手で密かに匿われていた最後の桃源郷。
だが、その仙境で一人が姿を消し、一人が死体となって発見される。そして連続して発生する奇妙な見立て殺人。文革から救われた人々が、なぜ次々に死なねばならないのか?
Commentary
解説・千街晶之
「探偵小説でしか語れない真実」という美しい理想が脆くも瓦解した二〇二〇年代の現実を本書は反映している。しかし、それでも憎悪と分断の時代に造反し、理性とロマンティシズムを掲げるという覚悟が、この小説から見て取れるだろう。(中略)理屈の通らない世をいかに生きるかをひとりひとりが真剣に考えざるを得なくなった現在、本書を読む意義は極めて大きい。
巻末解説より抜粋